能登の職人が全国のイスを再生/株式会社エフラボ
七尾市中島町を南北に貫く国道から逸れ、短い坂を上がると、飾り気のない平屋が見えてきます。そこは株式会社エフラボの本社工場。ホテルやオフィス、競馬場など、全国のさまざまな施設から張り替えや修繕の必要なイスが運び込まれます。
エフラボでは特注やOEM供給に対応しながら、傷んだイスを工場で張り替えています。自社の特長について、木村元伸専務取締役工場長は「ニッチで、ライバルが少ない」と語ります。
国内では今も複数の家具生産地があるものの、主な製造現場は既に海外に移っています。そのため、国内の家具職人の数は減っていますが、逆に良い製品を長く使おうという機運は高まっています。ニッチ市場で確かなポジションを築いてきたエフラボにとって、ビジネスの機会が消えることはしばらくなさそうです。
それにしても、通常なら職人は長い修業期間を経て一人前になるもの。なぜ、エフラボは人口の少ない能登で職人を確保できるのでしょうか。まず、七尾は建具の製造が盛んな地域で、手仕事への敬意が根付いています。その土壌に加え、エフラボは通常なら1人の職人が担う9工程を分業制としています。社員は短期間で1工程を担当する力が身に着き、さらに前後の工程を学ぶことで多能工となります。
本社工場の一角に、きれいに張り替えられたイスが並んでいました。これから全国の持ち主のもとへ戻ったら、また何千回、何万回と人々の体を受け止めることでしょう。そのイスを支えているのが、能登の職人たちなのです。
目線を変える契機に/専務取締役工場長 木村元伸さん
一口に経営者と言っても、幼少期から家業を継ぐ意識をもって育つ人もいれば、サラリーマンから結果的に役員になる人もいます。実証ラボにはマンパワーを駆使して問題を解決するタイプがいる一方、事前に決めたルールに基づいてシステマティックに対処するメンバーもいます。
私は会社員から役員になって製造現場を任されている身で、実証ラボには能登の中小企業経営者との話し合いの場を通して「普段の自分が持っていない目線を学びたい」という思いから参加しました。実証ラボのメンバーはさまざまなバックグラウンドを持ち、新たな挑戦に積極的な方々なので、話していて刺激をもらいました。
さて、私たちエフラボは職人を育ててイスを作ったり修理したりするわけですが、実証ラボでは季節によって異なる会社を渡り歩く人材や副業人材の活用が紹介されていました。もし有用な情報があっても、現場に落とし込める右腕的な人材がいなければ「絵に描いた餅」になってしまいます。今後はそうした人材の確保まで伴奏支援いただける枠組みになると、参加の意義が大きくなると感じました。
いずれにせよ、働き手が減る社会では、人材活用の面でも地域内で手を取り合う必要性が増すでしょうから、弊社が先々どうやってものづくりを続けるか考えるきっかけになりました。
ものづくりの喜び感じる職人
イス張り職人を募集しています。
イス作りには大きく分けて9つの工程があり、弊社では分業制をとっていますが、だからと言って職人各自は黙々と流れ作業をこなしているわけではありません。製品を作り上げるまでのプロセスでは、異なる工程を担当する職人同士が試行錯誤や工夫を重ねます。そういう意味で、ものづくりにとどまらず生きる姿勢も磨かれる職場です。