事例・実績
利用サービス
  • 能登の経営力向上委員会

[パネルディスカッション]
経営者の対話が能登の持続性を生む

2023年12月19日に開催した「能登でチャレンジ中の共創型人事戦略とは」パネルディスカッションの内容を記事にいたしました。

▼開催概要はこちら

(株)御祓川 代表取締役 森山奈美(以下 森山)

(同)ハピオブ 代表 島田勝彰氏(以下 島田さん)

数馬酒造(株) 代表取締役 數馬嘉一郎氏(以下 數馬さん)
(有)白崎シーサイドホテル多田屋 代表取締役 多田健太郎氏(以下 多田さん)
岸田木材(株) 専務取締役 岸田真志氏(以下 岸田さん)

【テーマ】経営者同士が学び合い成長する

森山 登壇いただいたパネリストの皆さんは、日々それぞれに課題を感じながら取り組みを進めておられます。その状況を多田屋の多田さんから順番に聞いていきたいと思います。多田さんとは「能登の人事部」と名乗り始める以前の「能登留学」の時代からの長い付き合いになります。

チョコ配って社内巡回

多田さん 私が代表に就いたのは2015年で、もう8年ほど代表をやっています。旅館には父の代や私の代に入ったいろんなスタッフがおり、事業を承継するに当たってはどのようにコミュニケーションをとるかについて悩みました。
今でも苦悩は続いているのですが、その中で常に心掛けていることがあります。それは食品スーパー「どんたく」の山口前社長に教わった「女性には花に水をあげるように声をかけなさい」ということです。私なりに解釈した結果、チョコレートを持って社内を回ることにしました。チョコを配りながら「頑張ってね」「何か困ったことはある?」と話しかけるんです。自分に対して話しやすい空気感をつくるためで、それは目に見えない風土をつくるということに他ならないので、これから何年もかけて進めるつもりです。
もっとも、いざ社長になると、スタッフがなかなか本音を言ってくれないことがあります。そこで、現場でスタッフの生の声を拾ってくれるスタッフと関係をつくることも心掛けています。

森山 なるほど。しゃべりやすい雰囲気をつくるのはプラス面が大きそうですが、逆に生まれる弊害もあるのでしょうか?

多田さん ありますね。たとえば、何かに悩んでいるスタッフがいるとします。社長の私とスタッフが直接的に話しやすい環境を整えると、スタッフは部門長の頭越しに私へ意思を伝えることがあります。「部門長には言いにくいんで、社長に話しちゃいました」となる。結果として、部門長は「全然知らなかった」となってしまうんですね。

森山 つまり、並行して現場のスタッフと部門長が話しやすい環境をつくるのも大事ということですね?

多田さん 部門長にもチョコ配って回ってもらおうかな(笑)でも、部門長にもそれぞれのパーソナリティー(個性)があって「良い方法」も違うので、どうしようかな、と悩んでいるところです。

「後手後手」解消へ情報を精査

數馬さん 私は24歳で事業継承し、今14期目に入っています。そのため人事上の経験は、年齢の割には多い方かもしれません。
その時々に様々な人事上の悩みを経験し取り組んできましたが、近年は、「後手にならないような採用活動」を心がけています。たとえば、元々は売り上げが伸びて人手が必要になったとか、欠員が出て人手が必要になったとか、とにかく戦略として計画していないタイミングで採用活動を展開する事態に陥っていました。そんな中、最近の傾向として、募集した際に応募してきてくれる人数や人材に変化が出てきていたので、採用についての考え方や位置付け、方法を変える必要がありました。

森山 その「変化」というのは、どういうものですか?

数馬さん 単純に求人を出した際の応募者の数が、以前より減りました。これに対して、どのルートからどういう人が応募してきたのか、というのを辿っていくうち、人材の応募ルートが変わってきていることを理解しました。そこで「今までの考え方や方法の延長ではなく、現状に対応した考え・方法に変えなければだめなんだ」と思い至りました。じゃあ、何を変えるのか。御祓川さんや同業者との壁打ちを繰り返して感じたのは、経営者として、もっと採用に時間を使うこと、そして同時に採用のことを勉強し続けなければいけないということでした。
そこで行ったこととは、まず、自社にとっての「理想の採用」はどういうものなのか、ちゃんと言語化することから始めました。それまでは「求める人材」「ほしい人材」ばかりを考えていましたが、「自社が価値を提供できるのはどんな人材で、その人はどんな情報をほしがっているか」という風な考えに置き換えました。
それらの条件をはっきりさせるために社員インタビューを実施したのですが、聞き手が私だと本音を言ってもらえないかも知れないので、外部の方にインタビューしてもらいました。一方で離職者インタビューも行いました。既に退職してしまった方に、当時はなかなか言えなかったこと、辞めて違う環境に身を置いたからこそ分かったことを教えてもらったんです。そうすることで、そもそも入り口(=採用)の時点で間違っていたのか、入社した後に何か悪い部分があったのかといった、自社の課題の所在を把握するのに役立てました。
次に、いろんなイベントに参加し、若い学生から見た自社の魅力や特長を洗い出しました。外部の知見を交えて言葉にすることで可視化したんです。さらに、競合他社や類似業界の企業による求人情報を見て、強みや特徴、休日や待遇面の伝え方といった情報の出し方を研究しました。「こういう情報は、このぐらいのレベルで言って良いんだな」「この段階で言うと逆効果になりそうだ」といったことを把握し、打ち出すべき情報や強化すべき箇所に当たりを付けたわけです。
それと並行し、分かりやすく価値が伝わる「地域初」「業界初」というタイトルが付く取り組みを狙って実践しました。たとえば「奥能登で初めて、ワークライフバランス企業の知事表彰を受けた」「いしかわ男女共同参画推進宣言企業として第1号認定を受けた」といったものです。今年も、北陸の酒蔵として、また奥能登エリアの企業としては初めてとなる「ユースエール認定」を受けました。
最近はインターネット検索する人も多いため、何かのワードで検索順位上位をとろうと考えました。今後はどういったワードが検索されやすいか頭を巡らせ、たとえば「SDGs 酒蔵」で検索したら上位に表示されるようにしようとしました。それに関連して自社の考えを発信しています。ホームページにコラムを投稿できるようにし、既に100記事以上を積み上げてきました。どういうイベントに参加し、お客さんがどう反応したかといったことを書いています。アップデートの方法として、求職者や学生との対話からどこに興味があるか、どの記事に関心が高いかを把握し、反響が大きかったテーマはさらに記事を追加するようにしています。

森山 しゃべりきった?まだ、あります?(笑)

数馬さん 数年前から本業を持つ異業種の社長を受け入れ、酒蔵で一緒に働いてもらっています。

森山 まさに応援戦略ですね。そもそも「応援しよう」というつもりで採用したんですか?

数馬さん 自社が価値を提供できる可能性が高いと考えたからです。酒蔵は冬季が忙しいのですが、逆に冬場に仕事が減る業種の方もいますよね?そういう方には価値を提供できる。例えば宿泊業の方なら、夏の本業へ戻られた際に、自分が造ったお酒だと言って宿泊客に提供できれば面白い。応援戦略というか、逆に「応援されてる戦略」みたいなところもあるかも知れません。

承継前に浮彫になる課題

森山 冒頭から「取り組みのシャワー」を浴びていますね(笑)次に、岸田木材の岸田さんにうかがおうと思います。人事のことで日々お悩みでしょうが、これまでにどんな取り組みをされてきたでしょうか?

岸田さん 悩ましいのは社長(父)との方向性の違いです。5年前に私が地元へ帰ってきて、今は承継前の時期です。本来ならそろそろ承継するはずでしたが、社長は外で「自分は70歳まで頑張る」と言っているようで、あと2年ぐらい先になりそうです。
私は私で新たに人材を採用しているのですが、どうも社長が過去に採用した社員とは毛色が違うんです。私に割とフランクなところがあるからか、私が採用した社員だと「風邪を引いちゃいました」というLINEを私に直接送ってきます。電話ではなく。それもこれも、組織の指揮系統や構造がハッキリしていないから起きている不具合なのかも知れないと反省しています。
また、評価制度が不足している課題もあります。困った時に参照できるよう、今ある経営理念をもっと噛み砕き、自分たちの言葉に置き換えて行動指針を策定はしたんです。ところが、指針をつくるだけで終わってしまい、うまく運用できていない側面があります。数字に置き換えて定量的に測定し、評価に反映させるところまでを整備しないと、現段階では落とし込みが足りていないんだと認識しています。

森山 行動指針を策定した当時を振り返ってみましょうか。初回は全社でワークショップを開催し、たくさんの問題点が出たのを覚えています。それらをどのように解決するかを考える中で、一案として出てきたのが行動指針でした。次のステップとしてプロジェクトチームをつくり、何度かワークショップを開いて行動指針の内容を詰めました。しかし、今度は運用面で難しいところがあるということですね。
運用上のつまずきというのは直面しがちな課題だと思いますが、数馬酒造ではどのように乗り越えていますか?

数馬さん 評価制度や事業承継というのは、我々の仕事で最もたくさんの相談を受ける分野です。後継者の方が「承継のタイミングが分かったので、これから採用に力を入れたい」という相談が多くあります。
これは統計で出ていることなのですが、会社を先代から継ぐと、社内の人間は半分ほど入れ替わると言われています。逆に言うと、仮に3割しか出ていかなかったら、よく残ってくれた方と評価できるということ。だから、いつも事業承継に際しては「半分の量の出血を覚悟できますか?」と尋ねるようにしています。
岸田さんがおっしゃったように、社長さんの採用と息子さんの採用は角度が異なります。でも、人が入れ替わったから行動指針も変えて評価方法も変えるとなると、二重苦になってしまう。そういうケースでは、評価の指標を売り上げ一択にしようと話すこともあります。行動指針を設定しているのなら、それに沿って行動すれば売り上げが伸びて当然。伸びていないということは、行動が伴っていないということで、過度な出血を防ぐ1つの方法として推奨しています。

「出血」の覚悟はあるか

島田さん 評価制度や事業承継というのは、我々の仕事で最もたくさんの相談を受ける分野です。後継者の方が「承継のタイミングが分かったので、これから採用に力を入れたい」という相談が多くあります。
これは統計で出ていることなのですが、会社を先代から継ぐと、社内の人間は半分ほど入れ替わると言われています。逆に言うと、仮に3割しか出ていかなかったら、よく残ってくれた方と評価できるということ。だから、いつも事業承継に際しては「半分の量の出血を覚悟できますか?」と尋ねるようにしています。
岸田さんがおっしゃったように、社長さんの採用と息子さんの採用は角度が異なります。でも、人が入れ替わったから行動指針も変えて評価方法も変えるとなると、二重苦になってしまう。そういうケースでは、評価の指標を売り上げ一択にしようと話すこともあります。行動指針を設定しているのなら、それに沿って行動すれば売り上げが伸びて当然。伸びていないということは、行動が伴っていないということで、過度な出血を防ぐ1つの方法として推奨しています。

森山 実際に事業承継を経験した社長として、多田さんは思うところがありますか?

多田さん 私の場合は意図的じゃなくスタッフが入れ替わりました。どうしても「私は変わりたくない」「ずっとこれでやってきた」という社員はいますが、たまたま私の代になって入社した支配人が北九州市出身の「ストロングスタイル」の人物で、その支配人と合わずに退職者が出ました。それを受けて新たに採用し、結果として入れ替わったことがありましたね。

頑張るほど、会社が割れる

森山 人が辞めていくというのは、経営者にとって辛いことだと思います。その局面を、どうやって乗り越えましたか?

多田さん 辛いですよね。辞めていく人を嫌っているわけではありません。可能なら残ってほしいし、一緒に変わってほしいので、こちらの思いは伝えます。それでも、仕方ないと受け取らざるを得ないケースはあります。
私がまだ専務だった頃のことです。私が採用したスタッフは私の考えを理解して動いてくれます。一方、社内には社長が採用して働いてきた勢力もいる。その状況下では、私たちが頑張れば頑張るほど会社が割れていくということを経験しました。「どっちの言うことを聞けばいいんですか?」となってしまったんですね。
だから、私が専務の間はとにかく最終決定を社長に任せていました。代替わりしたら逆に私を立ててもらわないといけないけど、それまでは最終ジャッジを社長に任せる。気になるところがあれば、父に直接お願いするようにしていました。

森山 インターンシップ生を受け入れ始めたのは、その頃ですか?

多田さん そうですね。きっかけは七尾市の一本杉通りにある高澤ろうそくさんでした。インターン生が来て一緒に働いた振り返りの成果発表を聞いたところ、写真のみんなが笑顔で楽しそうなんです。何だか「幸せ企業」といった感じで「羨ましい。うちも、ああいう風になりたい」と感じました。
しかし、当時の多田屋は最も若手が私です。仮に若い社員がいたとして、私が全てをケアできるわけではない。だから、せっかく新卒社員に入ってもらっても、きっとすぐに辞めちゃうだろうという諦めもあり、もしも若手を採用するならば、事前準備として風土をつくる必要を感じていました。その点、インターン生だと一定期間後にいなくなるのが前提なので、一度トライしてみて、多田屋のスタッフ側の反応を見る意味も含めて来てもらうことにしたんです。
ただ、スタート時は本当にボロクソに言われましたよ(笑)スタッフは「何をしたら良いがんや」「何できるいね」「あんな若い子を連れてきて」って。ところが、来てくれた子がすごく頑張り屋で、みんなに気を配りながら1カ月半ほど働いてくれ、帰る頃にはスタッフから「もう帰ってしまうん?」「送別会せんなん」という声が上がるほどでした。私は「これならいける」と考え、それからは毎年、インターン生に来てもらうようになっています。

森山 社外の人材が定期的に入ってきて、そしていなくなることを繰り返している様子を見ていると、何だか多田屋さんに若者を受け入れる土壌ができてきたように映りました。そうした変化は社員の顔ぶれが入れ替わることへの耐性につながっていますか?

多田さん どうでしょうね。インターン生を受け入れることを通じ、スタッフが社外からのヘルプに慣れるという効果があったと思います。がっつりとシフトに入るタイプの働き方じゃない人もいるんだと実感できましたからね。実は今、副業人材に来ていただいているんです。本業は能登でヨットや自転車を使ったツアーに同行する仕事をされていて、冬場や風が強い日にヨットが出航できない時だけ多田屋で働くなど、自由な感じで参画してくれている方もいます。
また、2024年4月に「出戻り」で帰ってくる予定の元社員もいます。もともとは新卒から3年間は多田屋にいて、辞める際に退職理由を尋ねたら「今の職場に不満があるわけではない。でも、他の職場も見てみたい気持ちが強いので、いったん辞めさせてください。東京オリンピックが終わったら戻ってきます」と言っていて、本当に帰ってくることになったんです(笑)
家族経営みたいな社員との関係なので、辞めたスタッフも友だちを連れてくることがある。そういう雰囲気が背景にあるから出戻りが実現したんでしょうかね。

森山 能登の企業の特徴として、家業的というところがあります。これは良くない意味で捉えられることが多いけど、多田さんの事例ではプラスに働いているんじゃないかと思います。
企業が検討すべきことの中には、論理的な考え方で対応でき、再現性のある経営戦略や人事戦略がある一方、「あんたがおるさけ」みたいな社員との家族的な寄り添い方をどうするかという感情的な部分もある。能登の場合、そのバランスが整っていて地域としての強みにつながっているんじゃないかと考えています。「経営力向上委員会」では業種の枠を越えて経営者がそれぞれの課題を持ち込んで相談し、対話を通じて解決を目指しているんです。
さて、岸田木材では最近、委員会で相談した結果として、社員がリモートで働き始めた事例があるんですよね?

岸田さん 新卒で入ってくれたデザイン系の社員が最近、身体的な都合から会社に出てこられなくなったんです。その社員は大阪から新卒で入ってきて富山に縁もゆかりもないため辞めてもおかしくはなかったんですが、発想やアイデアがとても面白く、貴重な人材なので私は続けてほしかったんです。
ただ、うちは製造業で、新型コロナウイルス禍にあっても現場に出てこそ仕事になるという感覚があったため、在宅ワークという枠組みを考えたことはほとんどありませんでした。それにもかかわらず、コロナと関係のないところで急に在宅ワークを取り入れる必要が出てきたんです。
もともと彼は私の直属だったので、彼の仕事というのは他の社員からするとブラックボックスというか、分かりにくいところがありました。そこで、これを機にチームで働いているんだという意識付けを図る形で解決したいと考えました。現在進行形でやっているのは彼が主体となってSNSを運用し、それぞれの現場が週1回、順番で投稿のための話題や写真を提供することです。投稿するネタは商品でも建物でも良いし、「片付けたらコウモリがいた」みたいな話など、何でもOK。スタートから3、4カ月、少しずつ進めています。

「孤独」乗り越える仲間づくりの場

森山 岸田さんは経営力向上委員会を活用してみて、何か役に立った点はありますか?

岸田さん 私たち経営者の立場って、基本的には孤独ですよね。たとえ何か悩んでいることがあっても、それを誰に相談するの?ってことです。妻や子どもに話すわけにはいかないし、だからと言って親と話すとケンカになるし…。そういう意味では、同じ世代で似た課題を抱えている方に対し、悩みを口にする機会があるというだけでも、実はありがたいんです。

森山 語り合うということが大切なんですよね。継続的に対話を続けることで、それぞれの企業が自立的になっていきます。そうした企業が地域に存在し続けることが、能登の地域全体の持続性を高めることに結び付くと考えています。いろいろな企業に、一連の取り組みの仲間に入ってきていただきたいですね。

数馬さん 私は自分自身もまだまだ成長したいと感じているので、同じように成長を志向する方に会いたいです。それに加え、既に成果を出している方には、ぜひ学ばせていただきたいと思っています。

多田さん 数馬くんに言いたいことを言われてしまった(笑)同業でも異業種でも良いので、本音で語れる方がいれば嬉しいです。

岸田さん 私は楽しくお話ができ、その結果を少しでも持ち帰ることができればありがたいです。

島田さん 三者三様で楽しい話でした。さて、いま世界で最も理想的な戦略を実行できている会社はどこでしょうかね?私は野球のロサンゼルス・ドジャースだと思います。大谷翔平選手に対し、契約金額のうち実に97%が後払いなんですが、そんなこと、普通の会社にはなかなかできませんよね。十二分に対話してないと成り立たないし、条件もオープンにして。間違いなく応援戦略で、ドジャースに来る前から大谷選手を応援してきたことが凄いと思いました。
経営者って、ああいう事例を自分たちに関連した「モデル」として捉えられるかが重要であり、面白いところでもありますよね。経営力向上委員会では、自分たちのリアルな話だけでなく、もっと外の世界の面白い事例を持ち寄り、そこからさらに持ち帰るという繰り返しを通じ、能登から日本を驚かせるようなアイデアを出す日が来ることを期待しています。

森山 先日聞いた話ですが、思考のタガをはめてしまっているのは経営者自身なんですよね。それを自ら外していくことにより、新たな発想が出てくるんだと思います。能登の可能性を切り拓くのは間違いなく能登の経営者たちであり、そこで働く一人ひとりでしょう。能登の持続性を高めるため、一人ひとりの変革や対話を重ね、オープンに情報を出し合い、互いに応援し合える関係性を築いていきます。

【Q&A】 「運が良い」も採用の指標?

森山 それでは、会場の皆さんとのQ&Aコーナーに入りたいと思います。一連のやり取りを聞いた上で、意見や質問がある方はいらっしゃいますか?

質問者1(数馬さん) 島田さんに教えていただきたいです。事業承継すると半分の社員がいなくなるとのことですが、入れ替わるスピード感をおうかがいしたい。最初にバッと入れ替わるのか、少しずつ進むのか、というところです。

島田さん 一般的なデータで言うと、最初に「ドカン」と入れ替わります。ただ、そこでビビる経営者もいるし、そのまま貫く経営者もいるので、その後の進行スピードはケースバイケースと言えますね。
私は相談された際に「会社に20、30年いて、後々まで残るのはどちらですか?」と聞きます。大元にあるのは「会社の永続」という視点で、そこから見てどちらが正しいことを言っているのかという議論にならないといけない。だから、経営者と従業員のいずれが正しくて間違っているかではなく、長い時間軸の流れという意味ではどちらの姿勢が望ましいのかを判断し、理解してもらうよう努めています。
いま、平均的な離職率は4%ぐらいと言われています。たまに「ウチは社員が辞めない」と誇る会社さんもありますが、離職率が0%というのも逆に良くない。全く人が入れ替わらない組織というのは停滞していますから、改革が始まると、うまく運ばなくなるんですね。直近の離職率を見ながら、あくまで「自然減」の目安として4%ぐらいを意識するべきだと思います。

質問者2 登壇者の皆さんに聞きたいです。一緒に働く人を募る際に条件を3つ挙げるとしたら、何でしょうか?

数馬さん 経営理念や方針に共感してくださる方、礼儀礼節がしっかりしている方、チームワークを大事にできる方の3つですね。

多田さん 多田屋で働きたいという方、和を大事にできる方、笑顔が素敵な方です。

岸田さん 私は仕事を楽しめるか楽しめないかという切り口を大事にしています。それに加え、あいさつができるか。その2点ぐらいしか見ていません。

島田さん 自社のビジョン「すべての人が活躍する社会をつくる」に共感できるか。あと、ウチのバリュー「対話・共創・伴走」に強みとして自分を持てるか。最後はパナソニックの松下幸之助さんからの引用ですが、運が良いかどうかです。
採用時には「あなたは運が良いと思うか」と聞き、理由もうかがいます。これは人生をポジティブに捉えているかどうかを反映する質問だと捉えているからです。「自分は絶対に運が悪い」と答えるような人は物事をネガティブに捉える傾向があり、付き合う企業をネガティブ方向に引っ張ってしまいかねません。一方、ポジティブに捉える思考は「リフレーミング」という能力につながる指標と捉えているからです。

森山 うちの掲げるビジョンに協力してくれる方、自己肯定感の高い方、3つ目に学ぶ姿勢のある方ですね。

企業が地域を未来につなぐ

森山 本日の登壇者の方々は既に100年以上の社歴をお持ちの会社の経営者です。あらためて気付かされたのは、企業として大きく成長するということだけでなく、企業や地域の永続に目的を置き、次の世代にバトンを渡すに当たり、いま何をすべきかを考えておられるということでした。
これから人口が減っていくことを前提として、いかに地域を未来につないでいくのか。我々がそれぞれの立場で何をすれば良いかということを考える貴重な時間になったと思います。ありがとうございました。

お問い合わせ

資料請求はこちらからお申し込みください

能登の人事部の
メールマガジンに登録しませんか?

企業の成長と人材育成に役立つ情報や
導入事例などの情報を定期的にお届けします。

    メールアドレス 必須

    お名前 必須