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[ 株式会社高澤商店 ]
老舗企業が新規事業の下地作りに着手。和ろうそく活用の場面を広げる。

1892(明治25)年に創業し、石川県能登地方・七尾の希少伝統工芸品「七尾和ろうそく」を作り続ける「高澤商店」。2022年に創業130周年を迎えた歴史ある老舗企業でありながら、近年は百貨店や量販店との取引をスタートしたり海外展開にも取り組んだりと、新規事業にも果敢に挑戦しています。

兼業人材の力を借り、新規事業のスタートダッシュを切った3ヵ月間を振り返り、経験から得た気づきや兼業人材の活用の魅力について紹介します。

将来を見据えて取り組み始めた販路拡大。カギは「魅力の発信」

「自然由来の植物性の油脂が主原料」「油煙が少なくススが出にくい」「液化したロウが芯材に染み込むため液だれがほとんどない」「芯が太く炎が大きく消えにくい」「風がなくても炎が自然と揺らめく」などなど……和ろうそくの特徴は非常にさまざま。高澤商店代表取締役の高澤久さんによると「和ろうそくの主な使用用途は仏事」で、寺院や仏壇で灯りとして用いられたり、お墓参りで使われたりすることが大半とのこと。「以前は、当社のお得意先のほぼ100%が仏壇店や寺院など仏事関連」だったといいます。

高澤さん 古くからのお得意先も多く、安定して和ろうそくを使っていただける状況が続いていることにありがたさを感じていました。一方で『使用用途がひとつに絞られている状態で良いものなのか』という疑問は、常に頭の片隅にありました。将来を見据えると、早くから何らかの手立てが必要になるのでは、と予感していたのだと思います。

和ろうそくの新たな用途の提案をしたいと一念発起し、2000年代初頭頃から新規営業先の開拓に着手。20〜30代といった若年層にアプローチするべく商品バリエーションを増やし、百貨店や生活雑貨量販店、ライフスタイルショップなどに提案したことで、新規の取引先の開拓に成功しました。さらに海外にも目を向け、ニューヨークやパリなどの展示会に出展。学生インターンシップを受け入れ共に取り組みを進めることで基礎固めをし、現在では売上の15%を占めるほどに成長しました。

しかしチャレンジを通じて、新たな課題も浮かび上がってきました。せっかく百貨店などでの取引がスタートしたものの、売上状況などを理由にしばらくすると発注が途絶える、といったことも散見されるようになったのです。

高澤さん 最初は良さを感じて取引がスタートしたとしても、良くも悪くもただの『商品』に過ぎません。単に商品を納品するだけでは、和ろうそくそのものの良さが伝わりにくいのだと痛感しました。

課題を乗り越えるため、高澤さんが着目したのが「異業種とのコラボレーション」。和ろうそくの「売り場」ではなく、「使われる場」を広げていく。国内市場の開拓を仕切り直そうと考えたのです。

高澤さん ただ、われわれのような中小企業にとって新規事業の立ち上げには『人手不足』という大きな課題が立ちはだかります。正社員を雇うのにもリスクが伴う。初動をスムーズに進めたいとの思いもあり、専門スキルを持つ兼業人材とタッグを組む方法を選びました。

人手不足を兼業人材でカバーしたことで、視点が増え視野が広がった

応募者の中から、スキルや適性などを踏まえて2名を採用。ひとりは長年マーケティングを専門としてきた関東在住の男性で、もうひとりはSNS運用や動画配信などのスキルを持つ石川県在住の女性がプロジェクトメンバーになりました。ふたりとも和ろうそくを使ったことはなかったそうで、「当社の商品をお送りして実際に使ってもらったところ『今まで使ったことのあるろうそくとまったく違ってファンになりました!』と言ってもらえて、率直にうれしかったですね」と高澤さんは口元をほころばせます。

プロジェクトの具体的な成果目標として定めたのは、新規取引先を5社開拓すること。最初の1ヵ月は、目標を達成するためのスケジュールをまとめ、アプローチ先のアイデア出しから取り組みました。

高澤さんは、メンバー間での関係性づくりにも丁寧に時間を取りました。「対等な関係性を築きたいと思って、最初に『お互いをニックネームで呼び合おう』と決めました」とスタート時を振り返ります。

細かな確認や相談にはオンラインコミュニケーションツールを活用し、毎週水曜の夕方にはオンラインミーティングを実施。1時間にまとめることを徹底し、顔を合わせて話し合うべき議題について議論を重ねたり、担当する業務の進捗を確認し合ったりしてきました。

ホテル業や大使館など、さまざまなアイデアから「コロナ禍以降、問い合わせが入ることがあった」という飲食業に照準を当てることに。特に環境に配慮した取り組みを実践する、高級志向のレストランをメインにアプローチしていく方針に定まりました。

高澤さん プロジェクトを通じて、『視点・視野の違い』に新鮮さや斬新さを感じました。長く同じ業界にいる人間同士の議論だと、どうしても想定外のことは起こりにくいもの。例えば社内での議論だと、営業先に大使館が選択肢にあがることはなかったと思います。兼業人材が加わったことで、新たな視点に気づくことができ、僕らの視野も広がりました。

また、高澤さんにとって「週に1回のミーティングは『立場を忘れられる時間』となった」のだとか。目標をともにしつつ、異なる経験、立場を尊重しながら意見しあう時間は心地良く「毎週水曜日が待ち遠しかったです」と笑顔を見せます。

取引先が、「七尾和ろうそく」の魅力発信の担い手に

約3ヵ月間のプロジェクト期間で、実現できたのは1件の商談獲得のみ。目標達成とはなりませんでしたが、終了後も社内でプロジェクトを引き継ぎ、無事取引が成立しました。最近では取引先の横のつながりの広がりが起き、取引先も徐々に増えているといいます。また、取引する都内レストランの社員が工場見学のため来訪することもありました。

高澤さん レストランのお客様に和ろうそくを使っている背景を説明することもあり、実際に製造工程を目にする体験が生きるのだとか。お取引先が同業やサービスを利用する顧客に対して『魅力の発信』の担い手になってくれているともいえますね。

現在、新たなプロジェクトを立ち上げ兼業人材を募る準備を進めている高澤さん。「今回の経験で、人材活用の可能性が広がった」と話します。

高澤さん 新たな事業展開をする際に、一番大変なのは下地作りです。プロジェクトを通じてそれがかなったと感じています。また、コーディネーターさんの存在にも助けられました。一歩引いた場所から全体を見守り、調整役を務めてくれたことで、兼業人材を含めプロジェクトに関わる全員のポテンシャルを発揮できたのではと感じます。

一歩を踏み出せたら、あとは歩き続けるだけ。だからこそ、最初の一歩がとても重要です。今回の事例を通じて、兼業人材と共に取り組むことは、自信を持って最初に一歩を踏み出す後押しになるのではと感じました。

受け入れ企業概要

  • 企業名:株式会社 高澤商店
  • 活用期間:2021年11月~2022年1月
  • 活用メニュー:兼業人材(ふるさと兼業)導入

https://chubu-jinzai.meti.go.jp/media/case-introduction/p5995/

地域中小企業のための副業兼業インターン人材活用プラットホームに掲載された記事を引用しています

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